【お父さんのための読書案内】『60歳からの知っておくべき地政学 』(高橋洋一 著)

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『60歳からの知っておくべき地政学 (扶桑社新書)』(高橋洋一)は、60歳以上の読者に向けて、地政学の視点から現代の世界情勢と日本の立ち位置をわかりやすく解説した書籍です。著者は、米中対立やウクライナ戦争など紛争が絶えない世界で、日本がいつ戦争に巻き込まれるかわからない状況を指摘し、「日本にとって何が正しく、どう行動すべきか」を考えるために地政学が有効だと説きます。特に、長寿社会で老後を生き抜くシニア世代が、国際情勢を理解し自己防衛するための知識を提供することを目的としています。

本書の内容は以下の構成で展開されます

序章 「戦争を知る」ことが地政学

この章では、地政学の基本概念とその重要性が紹介されます。高橋洋一は、地政学を「地理的な条件が国家の政治や戦略にどう影響するか」を考える学問と定義し、戦争や紛争の背景を理解する鍵だと強調します。シニア世代にとって、国際情勢が年金や生活に間接的に影響することを示し、「知らないでは済まされない時代」と警鐘を鳴らします。例えば、資源の奪い合いや領土問題がなぜ起こるのか、歴史的な事例(クリミア併合など)を交えて平易に説明します。


第1章 「イデオロギー」の冷戦時代

冷戦時代(1947~1991年)を振り返り、イデオロギーが地政学に与えた影響を解説します。

  • アメリカ(資本主義)とソ連(共産主義)の対立が、世界を二分した歴史を概観。
  • 地理的な要衝(例えば、東欧や朝鮮半島)がなぜ重要だったかを説明し、冷戦が単なる思想の対立ではなく、資源や勢力圏の争いでもあったと指摘。
  • シニア世代が若かった頃の時代背景を思い起こさせつつ、現代にも通じる教訓(大国間の対立が地域紛争を引き起こす)を導きます。

第2章 「中国経済」「ロシア軍事」包囲網時代

現代の地政学における中国とロシアの役割を分析します。

  • 中国: 経済的な台頭(一帯一路構想など)を通じて、アジアやアフリカでの影響力を拡大。経済力で他国を従属させる戦略を解説。
  • ロシア: ウクライナ侵攻(2022年~)を例に、軍事力で地政学的地位を維持しようとする姿勢を分析。エネルギー資源(天然ガス)の武器化も取り上げます。
  • アメリカや欧州がこれらに対抗する「包囲網」を形成する動きを説明し、日本がその中でどう影響を受けるかを示唆。例えば、中国依存のサプライチェーンが日本経済に与えるリスクを指摘します。

第3章 「機構」から読み解く新冷戦時代

国際機関が現代の地政学にどう関与するかを整理します。

  • NATO: ロシアへの対抗軸としての役割が再強化され、アジアへの影響(「アジア版NATO」構想)も議論。
  • 国連: 安保理の機能不全(ロシア・中国の拒否権)を批判しつつ、限定的な役割を解説。
  • 高橋は、こうした機構が大国間のパワーバランスにどう影響するか、具体例(シリア内戦での国連の無力さ)を挙げて説明。日本が国際協調の中でどう振る舞うべきかも示唆します。

第4章 国益に繋がる経済・通商政策

経済と通商が国家の安全保障に直結する点を強調します。

  • 通商政策(TPPやRCEPなど)が、単なる貿易協定ではなく、地政学的な同盟関係を強化するツールであると解説。
  • エネルギーや半導体などの戦略物資の確保が、国益にどう影響するかを分析。例えば、ロシアからのガス依存を減らす欧州の動きを例示。
  • 日本にとって、経済安全保障(国内生産の強化や資源確保)がなぜ急務かを、シニアにもわかりやすく説明します。

第5章 新冷戦時代の外交・安全保障

現在の外交と安全保障の課題を地政学的視点で掘り下げます。

  • 米中対立: アメリカの「中国封じ込め」と中国の「反米姿勢」が、軍事・経済両面でエスカレートする状況を解説。
  • 日本の立場: 米日同盟を基軸にしつつ、中国との経済的結びつきをどう調整するかのジレンマを指摘。石破内閣下での防衛政策(敵基地攻撃能力など)にも触れます。
  • インドやASEAN諸国など、新興国の台頭が地政学に与える影響も分析し、日本が多角的な外交を進める必要性を説きます。

終章 喫緊に迫る「危機」と未来の「希望」

日本が直面する危機と未来への展望をまとめます。

  • 危機: 中国の海洋進出(尖閣諸島問題)、北朝鮮のミサイル、ロシアの脅威など、日本周辺の緊張が高まる状況を警告。
  • 希望: 技術力や同盟関係を活かし、日本が危機を乗り越える可能性を示唆。移民政策や経済成長で人口減少を補う案も提案。
  • シニア世代に、「自分たちの未来だけでなく、子や孫の世代のために地政学を学ぶ意義」を訴え、行動を促します。

全体の特徴

高橋洋一は、元財務官僚としての知見とデータを駆使しつつ、専門用語を避け、シニア層が身近に感じられる例(エネルギー価格の高騰が生活に与える影響など)を多用しています。各章は独立しており、興味のあるテーマから読める構成です。地政学を通じて、国際ニュースの見方や日本の将来を考える力を養うための実践的な入門書と言えます。

興味のある方は是非本書を手に取ってみてください!

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